私は梨花ちゃんみたいに神通力なんてモノはない。
だけど、何故か前世の記憶がある。
多分、前世では圭一は最後の最後まで魅音とレナを疑った。
そして、疑心暗鬼に囚われたまま亡くなってしまった。
それが前世の記憶。
今回は、私が疑われる番。
多分、結末は一緒じゃないかな。
そうでしょ?オヤシロ様。
相手は、凄く凄く大好きな圭一。
酷な事をするんだね。
「・・・・・・・・・けいい、」
「うるせぇ!!!!」
「・・・・・。」
両手両足をキツい縄で縛られた状態で正座。
口は何とか開けるものの名前さえ呼べなくて役に立たない。
「・・・・・お前の目的はなんだ?」
切羽詰った顔でそう訊く。
目的なんてそんなのただひとつ。
貴方ヲ助ケタイ。
「ねぇ圭一!確かに私は御三家に関わってる人間だよ。だけど御三家は決して圭一の事なんて嫌ってない、むしろ大好きなんだよ?お願いだか、」
「俺はそんな事は聞いてない!!!」
「けいいち・・・・・」
「そんな目で俺を見るなあぁぁぁああ!!!!!」
「う゛ぅ!!」
ガンッ
悟史のバットが頭に響く。
思わず目を瞑れば、前世の記憶が蘇った。
いつの世界だろう?
そこの世界は私が疑心暗鬼に囚われてしまって魅音やレナを殺してしまってる。
沙都子もバラバラになっていて梨花ちゃんは自殺。
最後に圭一だけが残っていた。
『圭一は私の言う事、信じてくれるよね?』
『な、何をだよ・・・』
『オヤシロさまの存在。信じるでしょう?』
『・・・信じてやりたいところだけど証拠が無いじゃねぇか』
『証拠?証拠ならあるよ。今ずーっと傍でごめんなさいごめんなさい…って言ってるのが聞こえない?』
耳を澄ませばか細い声で ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい と連呼している声が聞こえる。
だけど圭一には聞こえていなかった。
『ねぇ、聞こえてるでしょ?これはゲームじゃないの、本気で答えて。』
『・・・・・・・・・・・・・聞こえた。』
『嘘』
パァン
やけに大きく響いた銃声の音。それは圭一の左腿を貫いていた。
唇を噛み締めて痛みを堪えている姿が何とも滑稽だった。
『・・・・みんな嘘吐きだよ。』
『なっ、んでだよ・・・・・?』
を信じるから、何があっても。
そう言ったのはだれ?
私はみんなを信じた。いや、信じてる。
今も。
『・・・・・・・・さようなら。』
『おいっ!!!俺は最後までお前をっ』
パンパンッ
「おいっ!!!」
「あっ、な、なに…?」
「なんで泣いてるんだ・・・・?」
「え・・・・・」
言われて気づいた、頬を流れる水滴の感覚。
そこの世界の私があまりにも情けなくてバカすぎて自己中心的過ぎて申し訳なくなった。
ちゃんと圭一は信じていてくれた。
・・・・・魅音達も信じてくれてたじゃない。
私がまた笑ってくれることを。
また部活が出来る事を信じてたじゃない。
それを裏切ったのは誰?
わたし。
皆を信じてるなんて言いながら私が裏切ったんじゃないか。
じゃあ圭一はどうだろう?
・・・きっと信じてくれてる、今も。
いや、信じさせてあげなきゃ!
「ねえ圭一、私を信じて」
「はっ!おぉお前なんか信じられるかよ!!!!魅音たちといつも一緒に居たお前、しかも御三家と関わってるなら尚更だろ!!!!」
「大丈夫。大丈夫だから……」
「なな何が大丈夫だ!!」
レナは最後まで圭一を信じた。
この身が砕けて崩れてボロボロになっても信じ続けていた。
それを圭一は別の世界で思い出した。決して無駄なんかじゃなかったんだ…!
だから、今度はこの世界で気づかせるんだ。
私の力で!!!!
限りある時間を使って頭をフル活用して考えるんだ!
大丈夫、まだ圭一は気づいてくれる、圭一だもの、絶対気づく!!
まだみんなは生きてる。私が死なない限り、みんなは死なない。
「じゃあ、圭一。ゲームをしよう?」
「は?!」
「そうだ、部活形式で罰ゲームもつけよう!」
「お前…こんな時に頭イカれちまったのか?!?」
「圭一は勝負受けてくれるよね?だって部活だもの。」
「くっ……」
圭一の顔に歪みが出てきた。悩んでる、どうしようか揺らいでる。
「じゃあ先に罰ゲームを決めようよ! ん〜そうだね。もし、私が負けたら大人しく死ぬ。それと御三家の奴等も一緒に殺すよ。」
「言ったな?それに二言は無いよな!」
「勝負を受けたら、の話。そして圭一が負けたらどうしよっかあ。入江先生の専属メイドってのはどう?しかも1年!なかなか酷でしょ。」
「絶対やりたくない仕事ナンバー1だな…………よし、乗ってやるぜ!!!!!!!!」
「そうこなくっちゃ!!」
別の世界で圭一はレナを救った。
だから救えるんだ。私にも。
「じゃあ地味にゲームは"アッチ向いてホイ!"にしよう!!」
「えらく地味だな・・・・」
「いいのー!!ルールは3回勝負。先に2回"負けた"方が勝ちね。」
「そんな安いもんでいいのか?お前死ぬんだぞ」
「良いのよ、こんな安いので。」
両手の縄を解いてもらい、じゃんけんをする。
「じゃあ行くぞ。」
「うん!」
「あっちむいてホイ!!」
「セーフ」
その後はやっぱりお決まりの展開になって、何十回、何百回としたところでようやく私の負けカウントが1になった。
その頃には気絶していた魅音たちも静かに目を覚ましているのに気づいた。
「は何故かこのゲーム異様に強いみたいだな…!!」
「そう、かな?圭一もなかなか強いけど」
脚がピリピリして感覚が無い。
両足は相変わらず正座で縛られたまんま。血が絶対止まってる。
そしてお決まりの展開で圭一の負けカウントも1になった。
お決まり過ぎて胃が痛いのは圭一とみんなも同じみたいだった。
「・・・・・・次で決めたいね。そろそろ下半身が苦しいみたい」
「そうだな。俺もこのヤンキー座り疲れたぜ。」
「じゃあさもう運に弄ばれるのには疲れたから、圭一、次は右指して左を向いて?私は左を指して右を向くから。」
「・・・・・・・・・・・・・・は?」
ちょっとした運試しだった。
私は信じている、圭一を。
だから圭一はきっと専属メイドさんになってくれる、はず。
圭一もきっと
信 じ て く れ る。
気 づ い て く れ る。
「じゃあ行くよっ!!!」
「お、おい!!待っ」
「あっちむいて〜〜」
「ほい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私の負け。」
「あ・・・・・・・・・・・・・」
綺麗に圭一の指が右を指して私の顔も右を向いていた。
一方、私の指は左を指していた。なのに圭一は上を向いている。
でも、まだ私は信じてる。
「じゃあ・・・・・・・・潔く死ななきゃ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「圭一の手で殺す?それとも自分で死んだ方が良いかな?」
「・・・・・・・ごめん。」
ほら
「圭一・・・?」
「ごめん、ごめん・・・うっ、ぅうぅぅううぅぅううう!!!!!」
救えたでしょう。
「ねぇ、圭一。私のこと分かる?」
「・・・・・あぁ。」
「気づいてくれた?自分の過ち。」
「・・・・・痛いほど分かった。」
「貴方に過去の記憶なんて残っているはずが無い。だから同じことを2回繰り返そうとしていただなんて知らないでしょう。
だけど、それでいい。知らないで気づけたんだから貴方は偉い。そうよ。だからそんなに泣かないで?」
ポタッポタ
綺麗な水滴が地面へと零れ落ちていく。
それを指で拭ってあげる。
ほら、見て。
梨花ちゃんなんて大泣きしてる。あぁ、みんなも泣いてるじゃない。
みんな泣き虫だなあ…。
「うっうぅぅうぅ・・・・・お前も・・・・泣いてるぞ・・・・・・相変わらず強がりだな」
「・・・・それ言っちゃったら格好つかないじゃんかあ」
圭一が笑った。
もうこの世界では見れないと思っていたのに。
嬉しくて私も笑った。
「ねえ圭一…」
「…ん?」
「……信じれなくてごめんなさい。」
「何のことだよ?」
「………秘密っ」
たまには、こんなハッピーエンドも良いでしょう?
金魚すくいの網よりも運命よりも薄い疑心。
そんなの私が簡単に破ってあげる、最高の仲間たちと一緒に。
だいじょうぶ、これからも貴方を信じる。
これからも私を信じて良いよ。
だから、泣かないで。