ドリーム小説 あ、今日も仲良く話してる。
彼の好きそうな眼鏡のフレームから覗き見るのがいつの間にか習慣になっていた。
そんな気持ちに気づいた2月の初め。
今月はバレンタインがあることを知った。









毎年街中が甘ったるい匂いとピンク色に包まれる季節は嫌いだった。
元々チョコとピンク色が好きじゃなかったし
意中の相手なんていなかったから友チョコ(っていってもチロルだけど…)しかあげていなかった。

そんな私にも春が来たみたいで。

本屋に行ってはバレンタインレシピを買い漁っている姿なんて
自分でも想像出来なくてそれ以前に友人たちもビックリしていて
「変な薬でも飲んだ?」といわれてしまった。失敬な。



彼とは全く接点の無いただのクラスメイト。
私の存在感なんて0に等しいのかもしれない。
あるとしたら図書館のカウンター利用。
たまに利用してくれてるみたいで本の貸し出しを何度かしてあげた事がある。

いつから好きになっていたかなんて知らないけれど
本当に急に気づいたこの気持ちに最初は戸惑ってようやく落ち着いてきたところ。


そんな矢先のバレンタインイベントは神様が与えてくれたようにしか思えなかった。

だけど成功率なんて10%だったりする。
何しろ接点が無くて情報が涼宮さんとの会話を盗み聞きだなんて。

それから


涼宮さんと付き合ってる噂。




「だから知らないと言ってるだろう」
「ほんっと使えないやつね!!」


今日もあんな風に仲良く喧嘩してる姿を見ると信じたくなくても信じてしまいそうになる。
本人に聞けるはず無いからまさに【当たって砕けろ】だ。




甘い物が平気かなんてのも日常会話で出てこないもんだから凄く厄介。
友人にも彼と親しい人は居ない。

前日まで悩む羽目になって結局作ったのは"生チョコ"。
もうそのまま板チョコ渡してしまおうか、それとも99%カ●オを渡すか迷ったけれど
本命なんだよ!と友人に飽きられて生チョコにいたった。
99%カカオ美味しいのになぁ。 (99%はマジでやばいよ!!by友人)



出来るだけオリジナリティを出すためのトッピングを崩さぬように
ラッピングをしてカバンにつめて迎えた当日。



渡すタイミングはとりあえず放課後にし…たわけではなかった。
彼はいつも涼宮さんと部活をしてるから時間が無いと思ったのだ。
なので昼休み終了間際に渡す事にした。






!あんたチョコ忘れたの?」
「え、なんで?ちゃんと持ってきたよ」
「凄く暗い顔してて緊張してるように見えないわ」
「あはは」


緊張?そんなのしまくってる。
いつもの倍以上に授業が長く感じて落ち着かない。
その度に先生に目を付けられて当てられた。
隣の男子にも「今日のは変だな」と言われてしまった。

それと 今朝の盗み聞き情報のせいもあった。


『そういえば今日はバレンタインなのね!』
『あぁそうだったな。忌々しい日だ。』
『キョンは誰かに貰いたい女子とかいるの?まぁいないでしょうね』
『勝手に決め付けるな!俺だって健全な男子なんだからいるに決まってるだろ』
『へぇ〜誰?誰なの?!教えなさいよ!!』
『嫌だね』
『そう言うと思ったわ。まぁもらえると良いわね』


一気に自信喪失してしまった。
そんな彼に私なんかがあげて喜んでくれるのだろうか?増してや受け取ってくれないかも。
少女漫画的な展開にならない限りあり得ない。

だけどもう作って持って来たんだし、当たって砕けてやろうじゃないか!と開き直る事にした。

そこで、ハッと気づく。


「・・・・・・・・どうやって誘えば良いんだろ?」


今昼休みの始まったばかりだと言うのに彼の姿が見当たらない。
まだ時間があるので彼を探す事にした。

「転んでチョコを割らないようにねー」
「そこまでドジじゃないって!!」
「いってらっしゃい」

友達に背中を落としてもらいラッピングした箱をぎゅっと抱きしめた。





彼の居そうな場所をいくつか周ったけれど全然見つからなかった。
中庭も探したけれど来た気配もない。
時計を見ると昼休み終了まで後10分しかない。
全く検討がつかずとりあえず校内に戻って図書館へ向かった。

「いないよね…」と諦めながら。


「い、居た・・・・よ。」

図書館の奥にある読者スペースに彼の姿が見えた。
全く人気の無いスペースで一体何してるんだろう?
ここは図書委員の権限を利用と思い偶然を装って行くことにした。
だけど、それは出来なかった。








「うっ受け取って下さい…!!!」
「・・・・・・」

咄嗟に隣の本棚へ隠れて危うく箱を落とすところだった。
本棚が邪魔で見えなかったけれど彼の前には女の子が居たのだ。
言葉からして今告白をしているところ?


タイミング悪すぎでしょ、私。


「・・・・・・だめですか?」
「すまん・・・・」
「そ…うですか。やっぱり涼宮さんが居るから?」
「ハルヒは違う!」
「じゃあなんで?!受け取ってくれるだけでもいいじゃない!!」
「貰いたい奴がいるんだ。悪い。」
「うっ・・・うぅぅっ!!!!」


女の子が泣きながらこっちに向かってきたので慌てて体を引っ込めたが遅く、
どんっと派手な音がしてぶつかってしまった。
ごめんなさい!と謝ったけれどそんなのお構いなしに去って行ってしまった。

「・・・・・だよな?」
「っ?!」

しりもちをついた状態で恐る恐る後ろを向いて彼の顔を確認。
もちろん、何してんだ?という表情。

「やっあの!図書館の本棚点検してたんだーっ・・・」
「今日お前の当番じゃ無いだろ?」
「その暇だったから!点検してみようかなぁって」
「・・・・・・ほう」


非常に気まずい雰囲気が流れていく。
もうその顔は嘘を見破ってるようで私から何かを言うのを待っているみたいだった。
このまま時間を無駄にするのももったいないので白状しようと口を開けた。

「なぁ」
「ねぇ」

・・・・・・・彼にどうぞと譲る。

「すまん、その箱はなんだ?」
「え、箱?」

両手に箱の感覚が無く辺りを見れば1m離れたところにコトンとあった。
…ぶつかった拍子に転がっていったの?!

「やっぱりお前のか 誰かにあげるんだな」
「そうだけど…形崩れちゃったかも……しれない。」
「・・・・・・それ俺が貰ってやるよ」
「え」
「・・・・・・・・・・・・・なんてな冗談だよ。」

そこは冗談だと激しく困るんですけど 軽く心の中でつっこみを入れたのと同時に
昼休み終了のチャイムが静かな空気を壊す。
え、終了?

気づけば腕が勝手に伸びて彼の裾を持っていた。









?」
「ぁ、ごめ…」


『「貰いたい奴がいるんだ。悪い。」』

そういえばさっきそんな事を言っていた気がする。
ここまで来て怯えるなんてやっちゃダメだけど、やっぱり怖い。

ごめんと言いながらもまだ掴んでいた裾を更に強くする。

「これキョン君に作ったの。だから、貰ってくれると凄く嬉しいです。」

凄い顔が火照ってる気がして下を向きながら返事を待つ。
心臓がドキドキとうるさくて、今にも彼に聞こえてしまいそうで余計にうるさくなる。



余りに長すぎる返事。
恐る恐る上を見てみれば




―彼が笑ってる?





「有難く貰わせて頂きます。前言撤回とか無しだぞ?」
「・・・・・はい!って、え?」
「なんだ」
「なんで私の貰ってくれるの?」
「!」


みるみるうちに彼の顔が赤くなっていく気がする。
夢見たいで嘘みたいで信じられない。
気が向いたから とかそんな理由じゃないよね?だったらさっきの子のも貰ってるはず…







に貰いたかったからだ と言えば分かるか?」





「・・・・・・・・・・・・・うそだぁ!」
「なっ本当だぞ」
「じゃ、じゃあ…じゃあ!!!! 私、」

付き合ってくれるの?と言う前に口がふさがれてしまった。
そして


「俺と付き合ってくれないか?」







「あ、は、はい!!!!」








結局、箱の中身はぐちゃぐちゃになっていて悲惨なものだったけれど
美味しいって言ってくれたので結果OKということにした。

お菓子会社の戦略に上手くはまってしまったけれど
気持ちが実ってよかった。

ね、キョン?
Novel Top