ドリーム小説

とある国のあるお屋敷には住んでいました。

そこのお屋敷ではは住み込みでお手伝いをしていたのですが、

継母とその連れ子である姉達に毎日毎日虐められていました。


!ここにホコリがまだ溜まってるわよう?」

「(さっきそこ拭いたわよ!っていうかアンタがそんなの着てるからホコリが舞うのよ!)申し訳ございません。ただいま拭き取ります。」

「全く使えないわねぇ。うちで雇ってもらえてる事に感謝なさいな」

「はい。」



そんな時、王国で派手な舞踏会が開かれました。



姉たちは普段より華やかに着飾って出て行きましたが、は連れて行ってもらえませんでした。

代わりに命じられたのはまたしても部屋の掃除。

部屋の窓から見えるお城はいつもより輝いて、それでいてとても美しいものでした。

私にもドレスがあれば…と思いますがドレスを買うお金さえありません。


「あぁ…行きたいわ。せめて、お城の近くまで行けたらどんなに幸せでしょう!」


声に出してみましたが誰もその願いを叶えてくれるわけがありません。

は仕方なくぞうきんに手をかけようとしたその時、目の前に何やらキラキラと光る物体が現れました。

それはなんと、人の形になったのです!


「うわっまぶし!」

「ああ、やっと出てこられたわ!まったく登場に何分かけてるのよっ!」

「(……あれ。魔法使いってこんな感じだったかな?)」

「あ、あんたが?へぇ。」

「そ、そうですけど何か?ていうかあなた誰ですか」

「あたしは見ての通り魔法使いよっ!を舞踏会に連れて行くことが使命なんだけど難しいわね」

「えっ?来て早々それっていいんですか…」

「まあ良いわけないでしょうね。にしても、もうちょっと良い人材見つけられなかったわけ?」

(なんかこの魔法使いヤダ!超個人的だけど嫌だ!!)


自称魔法使いは今までのグリム童話の魔法使いたちを超える険しい顔つきで、ワガママで、願いを叶えてくれなさそうな人でした。
(こんな物語ってアリ?!)







偉そうにご主人様の社長イスに足を組んで座る自称魔法使いとその下で体操座りをする

魔法使いは建前だけ尖がった帽子とおもちゃみたいなステッキを持っていました。

「で、あんた何がしたいの?」

(むかつく聞き方だなあ!)私、今夜開かれている舞踏会にどうしても行きたいんです!」

そんなの分かりきってるわよ。だからどうしたいのって聞いてんの」

「姉たちは綺麗なドレスを着て綺麗な首飾りをつけて出かけていきました。私も着飾ってせめてお城まで行きたいわ!」

すると、魔法使いは盛大なため息を付いて(そんな嫌そうな顔するんならしなくていいですよ…)(しなきゃ物語が成り立たないでしょ!)ステッキを握りました。

何かの魔法を使うんだ! そう思ったはキラキラとした眼差しで魔法使いを見ましたが何秒見つめても何も起こりません。

やっぱり似非魔法使いなのかと疑い始めたとき、魔法使いはステッキを横にふるふると無言で振りました。

眩い光が部屋をいっぱいにしたかと思えばの目の前に現れたのはドレスでした。


「…なに、これ?」

「ドレスよドレス。に一番似合うドレスを出したらそれだったみたい」

「こんな薄汚くてボロボロな感じが私に似合うっていってんのかー?!」

って顔もスタイルも良いわね」

「褒めるならもっと良いの出して下さい!」


明らかに余り布で作ったと思われるつぎはぎだらけのドレスでした。

ドレスを一回も着た事のないでも流石にこんなのを着られません。

どうにか頼み込んで新しいドレスを出してもらいましたが、それでもやっぱり目立たない色に変わりはありませんでした。

しかし、何故か靴だけはガラスで出来た豪華なものでした。

「う〜んなかなか似合うじゃないっ!やっぱりあたしの目に狂いはないようね」

「初めて嬉しくない褒め言葉だと思いました。」

「なによ。せっかくの舞踏会に行くんだからもっと笑いなさいよ」

「こんな格好で笑うも何もないです…(凄い無茶振りだと思う)

、よく考えてみなさい。いい?舞踏会ってのは派手なパーティーよね。当然貴族や何やら派手で豪華な人ばっかりが来る。 だからこそ!地味〜なドレスで行くのよ!そしたら目立つでしょ?赤の中に黒があればどう?凄い目に留まるわ。」

「は、はあ…。」

魔法使いの演説は30分近く続き、正座で聞いていた私は足が痺れ屋敷を出たのはそれから1時間になったのでした。
(本気で誰か魔法使い代えてください。)







「車とか馬車とかないの?」

「姉たちが全て使ったので無いです」

「本当使えないわね。まあいいわ」

「(この人も姉達と仲間じゃないのか…?)」

「言っとくけどあの継母たちと一緒にするのやめてよね!」

「(読心術持ってる!)」

顔見ればそんなの分かるわよ?

「す、すみません…。」


魔法使いは暫く腕を組んで考えました。もその様子をじっと見守りました。

すると、魔法使いはパアッと顔を明るくさせてステッキを上に翳しこう言いました。


徒歩で行くわよ!徒歩!

「…っえ?」


が驚くのも無理はありません。だって魔法使いが徒歩?信じられません。

しかし、目の前の魔法使いは意気揚々と暗い路地をずんずんと進んで行っていました。

慌てても着いて行きます。


「あ…の!な、んで!馬車とか!出さないんですか!!(歩くの速いよ〜っ)」

「歩いて健康的になるのよ。だいたいあんた普段から運動してないでしょう?」

「そうですけど!だけど!こんな日に限って徒歩ってダメだと思いますー!」

「いいじゃない!大したドレスも着てないしひ弱な女なんてすぐに捨てられるんだから!」


家を出る前も思ったことでしたが、はこの魔法使いはやけに説得力のある話をしてくれるな(何年魔法使いやってると思ってんの?)(いやそう言われましても…)(魔法使いなめないでよね!)と思いました。

魔法使いはそれに、と付け加えまたしても信じられない言葉を発しました。


「そんな事に魔法使うなんてもったいないのよ!それにお城までたった10分で着くでしょ」


は空いた口が塞がらないまま無言で長い長いお城の道を1時間掛けて歩いていきました。
(元々大した魔法使ってないじゃん!っていうツッコミは無しですか?)







目の前に広がるのは見たこと無い王族や貴族たち、そしてお城の煌びやかな外装でした。

は息を整えもう一度お城を見上げました。


「入らないの?」

「お城をこんなに近くで見れただけで満足しました。なので、もう帰ろうかと…」

「はあ?!あんたって馬鹿?せっかくここまで来たんだから入りなさい!」

「いえでも、こんな格好で入れません。私にはやっぱりお屋敷が一番みたいです。」

「ここまで消極的なシンデレラははじめてみたわ。」

「(ここまで気の強い魔法使いもはじめてよ!)」


魔法使いと言い争っていると、通りすがりの貴族たちからこんな会話が聞こえてきました。


「今日こそ王子様に会えるのね〜〜〜!!今日の私どう?決まっているでしょう?」

「何でも欧米とはかけ離れた顔立ちだそうよ?楽しみね!」

「それに婚約パーティーもあるんですって!頑張りましょうね!」


通りで舞踏会に行く人々は女性が多いわけです。

どの女性も普段の何倍もキレイに着飾っているのがとても分かります。

は自分のドレスをじっと見て深いため息を付き、やっぱり帰ろうと一歩踏み出しました。


「ちょっとっ!さっきの話聞いたでしょう?!は顔立ちもスタイルも良いんだから行きなさいよ!」

「お世辞は十分過ぎるほど頂きました。」

「あ〜もう。行くわよ!」

「えっちょっと?!」


強引に連れて行かれるはいつの間にか魔法使いも盛装をしている事に気づきました。

そしてお城の中に入るとまた違った雰囲気で思わず唾を飲んでしまいました。

しかし、何故か魔法使いの顔は険しいのです。


「ど、どうしたの魔法使いさん?」

「ちょっと魔法で王子の顔を見たんだけどね、そこまでカッコよくないわ。」

ちょ、え?えええええええ!?っていうかそんな事で魔法使っていいの?!」

「まぁせいぜい頑張りなさい。」


魔法使いは見事に責任を放棄し他に魔法使いや魔女が居ないか探しに行き、は呆然と立ち尽くすだけでした。
(やっぱり帰ろうかな…)







ただ突っ立っても無意味だと思いは思い出作りの為にもお城の中を見ることにしました。

どれも見たことのない食器や金銀の宝石、食べ物までもがキラキラとしていました。


「こ、これって勝手に食べてもいいのかしら…?」


はパーティーに一度も参加したことが無く、周りの貴族たちに聞こうにも恥ずかしくって聞けません。

こういう肝心なときになぜ魔法使いはいないのだろうと辺りを見回しましたがいませんでした。

は凄くお腹が空いていましたがここは我慢することに決めたその時、男の人が声を掛けてきました。


「食べ物お取りしましょうか?」

「そんな…いいんですか?」

「もちろん。その為にあるんですよ。なんならこのチキンもお取りしましょう」

「はい。ありがとうございます!」


思わずはうっとりと男の人に見惚れました。

一見派手な盛装ではないものの雰囲気からして貴族だと分かりました。

その人は誰が見ても素敵な方で、は顔が熱くなっていきます。


「どうぞ。美味しいですよ。」

「本当にありがとうございます。私、こういうの一度も参加したことなくって…」

「そうなんですか。では、俺と1曲踊ってくれませんか?」

「わ、私でよろしければ是非…!」


男の人がリードをしてくれるお蔭でスムーズにテンポを踏める

しかし、顔は笑っていますがどうやら様子がおかしいようです。

相手に見られぬようニコニコとしていると、曲が変わるのと一緒に男の人も踊るのを止めてしまいました。


「とてもお上手で。俺はこれから用事があるので失礼します。」

「貴方様のおかげです。ありがとうございました!」

「こちらこそ。では。」


はにこやかに手を振ると急いでトイレへ向かい、個室にこもりました。


「あの魔法使いめ…」


魔法使いが唯一魔法使いらしいことをしてくれたガラスの靴は、通気性が悪くこれ以上にないほど蒸れていました。
(魔法使いのクセに役立たずってどうよ!)







十分に足を乾燥させてトイレから出ると魔法使いがいました。


「舞踏会でトイレなんて禁物よ?」

知るかー!あなたのせいでガラスの靴が蒸れ蒸れだったのよー!!」

「そんなの知らないわよ。ガラスの靴なんだし大目に見てよっ」

「(こいつ…!)」


が魔法使いを無言で睨んでいると、お城の雰囲気が一気に変わり城内もざわめき始めました。

一体何事かと思い王座の所を見てみると、なんということでしょう!

つい先ほど一緒に踊ったあの男の方がいるではありませんか!

王子の正装をしている姿はとても美しく素敵です。


「ちょっと、目がハートマークになってる。」

「ね、ねぇ!あの人が王子なの?!何がカッコよくないのよ!全然かっこいいわ!」

「あたしは個人の感想で言っただけ。」


王子は一礼をすると自己紹介を始めました。


「皆様、今日はお集まり頂き有難う御座います。私はジョン・スミスと申します。以後お見知りおきを。」


マイクを握りなおした王子を見ていたはちょうど目が合ってしまいました。

そして続けて王子はこう言いました。


「今晩は、私の婚約者をこの舞踏会で決めようと思います。」


尚もの目を見ながら王子は話します。

これにはもドキドキで目が離せません。

暫く王子は何も話さずじっとを見つめます。も応えるように見つめあいます。

突然、魔法使いが肘で小突いてきました。


「ちょっと!・・・ちょっとーっ!!」

「な、なんですの!」

「言い忘れてたけど、魔法は0時の鐘がなったのと同時に解けてしまうわ。」

「そうなの。え、ええぇっ?!

「もうすぐ鐘が鳴るから早めに言っておこうと思って」

「もうすぐって…あと1分後じゃない!!バカーッ!!!」


は魔法が解けた姿を王子に見られたくない、そう思い一刻もお城を出ようと

人だかりをかき分けて出口へと向かいました。

その様子を王子が見逃すはずがありません。慌ててマイクを手放しを追って行きます。

もう城中が大パニック。恋の行方はどうなるのか、あの女性が王子と結婚するのか、ざわめきが絶ちません。


「(早く帰らなくちゃ!)」


そして出口をようやく出たところで、お城の0時を指す鐘が鳴りました。

しかし、は慌てていたので階段の所でガラスの靴の片方が脱げてしまいました。

拾おうと後ろを振り返ったとき、はとても驚きました!

何故なら王子が自分を追いかけてきているだなんて知らなかったのです。


「どうして王子さまがいらっしゃるの?!」

「君を追いかけて来たんだ!」

「ごめんなさい!私もう行かなくちゃ!」

「行くな!」


二人がこうしている間にも、容赦なく0時の鐘は鳴り響きます。

は焦る気持ちとまだここに行きたい気持ちが混ざり合い、どうしていいのか分かりません。

このまま王子の胸の中へ飛び込んでいけたならどんなに幸せだろう。

けれど、は思いました。

魔法が解けてしまうといつもの汚らしい格好に戻ってしまう。

王子に私は似合わない。もっともっと素敵な方が似合うのだと。


「おねがい!行かせて!」

「どこへ行くんだ!なら俺も一緒に行く。」

「駄目です!」


もうすぐ0時の鐘が終わってしまいます。

は長いスカートを指でつまみ上げ丁寧なお辞儀をして、王子に辛いさよならを言いました。


「待ってくれ!俺は君の名前さえ知らない!どうやって君を探せばいいんだ!!」


急いで階段を降りていくに向かって王子は叫びましたが届かなかったように

は暗闇の中へと消えていきました。

これが運命の出会いだと信じて疑わない。

王子は何としてでも彼女を探し出そうと城へ戻ろうとした時、階段にキラリと光ったものが落ちていました。


「これはガラスの靴?確か彼女が履いていたものだ!」


割れないようにそっと拾うと駆け足で城へと戻っていきました。




その頃、は暗い森の中を歩いていました。

片方のガラスの靴を拾うのを忘れたはもう片方のガラスの靴を手に持ち裸足で進んでいきます。

しかし、なぜまだガラスの靴があるのでしょう?魔法は0時の鐘と共に解けるはずなのに…。

魔法使いの姿が見えないため不思議でしょうがありません。

は家に帰ったら解けてしまうんだろう、そう思うことにしました。


「とても楽しい夜だったわ。本当、夢みたいな世界だった。何もかもがキラキラと輝いていて、豪華で、一生に一度しか味わえないものだった。」


深いため息と後悔が押し寄せてきます。

でも、これは彼を想っているからこそ仕方が無いのだと、自分に言い聞かせました。

途方に暮れて歩いていると、後ろから誰かがこちらに向かっている足音が聞こえてきました。

よく見るとそれは魔法使いでした。


「あんた走るの速いのよっ!魔法使い置いていくなんてどういうつもり?!」

「だって、0時の鐘には魔法が解けるって言うから…。」

「だからって置いていくことないでしょう!」

「ごめんなさい。」

「それになんでお城抜け出してきちゃったのよ。お城中がパニックだったわ」

「なんでって、魔法が解けた後の姿なんて誰にも見られたくないからよ。(まだ解けてないみたいだけど…)


すると、魔法使いは信じられないという目でを怒鳴りつけました。


勘違いしてるわよ!

「え?」

「誰が今夜の0時の鐘に魔法が解けるだなんて言った?魔法は1週間後解けるのよ!」

「なっ…そんな!!」


は迷わずお城へと走り出しました。

途中ドレスが枝に引っかかり少し破れたりしましたがそんなのお構いなしです。

とにかくこけても倒れても王子の元へと急ぐのでした。




王子はガラスの靴の片方を片手に窓の外をぼーっと見つめていました。

の着飾っていない姿を思い出します。

全く貴族という雰囲気を出していないにも関わらず、まるで彼女自体が光っているようでした。

そんな所に惹かれていたのです。


「もう一度だけ会えたら。」


そう小さく呟いて窓を閉めようとした時、テラスに見覚えのある姿が見えました。

何やら城の中に入りたい様子でパーティーの関係者かな、と目をこらしてみると

なんとそれは今、まさに会いたいと思っていただったのです!

王子は部屋を飛び出しテラスへと向かいます。

信じられない気持ちと嬉しい気持ちが王子を動かします。



「王子!!」

「戻ってきてくれたのか?」

「私あなたに逢いっ?!」


有無を言わずに王子はを力いっぱい抱きしめました。

たったさっき出会ったばかりだというのに…自分でもなぜこんなに愛しく思えるのか分かりません。

ただ、ただが欲しいと思ったのです。

戸惑っていたも王子の愛に応えるように腕を回し力を込めました。

どのくらいそうしていたでしょう。互いに相手の顔を見つめあいます。


「王子、私…」

「ジョンと呼んでくれ。貴方の名前は?」

です。」

。信じられないかもしれないが、俺は君と結婚したい。一目見た時にそう思ったんだ。」


は一瞬躊躇いました。

こんな何も取り柄の無い私と結婚してもいいんだろうか?

貴族でも何でもない、ただの小間使いと結婚して幸せになるのかしら?

しかし、王子はそんな事を気にしてなんかいませんでした。

王子は、そのものに惚れていたからです。


「本当に私でいいのですか?」

だから良いんだ。結婚してくれるか?」


はこれ以上に無い愛を込めて頷きました。そしてこう言ったのです。


「はい!喜んで!」






それからまもなく二人は結婚し、国全体をあげての祝福となりました。

魔法も1週間後に解けてしまいましたが何も問題もありませんでした。

一方、魔法使いは、というと…


「ほぅらさっさと働くのよ!絶対この国に異世界人の1人や2人いるんだからっ!!」

「ハルヒさんそのくらいにしといた方が…」

「良い?!仲間がいないってどれだけ辛いか分かる?はめでたくゴールインしたんだからあたしにだって幸せが来なきゃ不公平よ。」

(あなたの幸せは私がゴールインしたことじゃないのね!)

「だから当分まだ居させてもらうわ。文句無いわね?」

「気の済むまでやってくださいな。(やれやれ)」

「そうさせてもらうわ!!さぁ〜今日も市内散策よー!」

(なんだかんだで良い人だから憎めないのよね。)