TOP ドリーム小説 「キョン!」
「なんだ

ほら、また。

「なんでもな〜い」


いつだって君はそう。






キョンとは今年で幼馴染歴16年、片思い歴も16年。いや、14年かもしれない!
物心を覚えた時にはキョンのことを他の男の子たちよりも意識していた気がするし、
いつだってカッコイイの基準はキョンだったし


(「え〜タクヤ君はキョンより優しいからダメ!」とか、 「ナオ君はキョンよりかっこよすぎるからダメ!」とかそんな感じ)、


とにかく"キョン"が大好きで大好きでたまらなくてどんな時もキョン!だった。
思春期に入った今では昔みたいに"好き好きアピール"をする事は無くなったけれど、この一途さは変わらぬまま!

そんなキョンは、というと…



な〜んも変わっていない。
そう、何にも。


小さい頃から"ちゃん〜"では無く"ー"だった。
どれだけキョンのお母さんが「ちゃんと呼んでごらん?」と言っても彼は「早坂ー」と私を呼んだ。

キョンは昔から何にも変わっていない。
その性格は特に。口調や「ヤレヤレ」とする顔は小学生に出来上がり、今日も変化無し。


そうして私の最近の願いは、名前を呼ばれたい。



―付き合いたいなんて言わないから名前を呼んでくれたら、なぁ…


「ねぇ、キョン」


いつもの帰り道、私より半歩先に歩いているキョンを呼んだ。


「ん?どうした?」

「キョンはさ、あたしの事""って呼ぶよね。なんで?」

「急な質問だな。」

「ねえなんで?」

「なんでだろうな」


そう言って、
前方へ向き直したキョンはちょうど踏み切りの点滅を見て「電車だ」と私を止めた。


カンカンカンカン


ぞろぞろと人が踏み切りの前で止まる。向こう側でも人がたくさん待っている。
電車はどうやら左から来るらしい、さっきよりもはっきりとガタンゴトンと聞こえてきた。


「俺さ」

「え?」


キョンは顔を向けたままだった。


「さっきの質問にまだ答えてなかったよな?」

「うんー」


ガタンゴトン、ガタンゴトン

ガタンゴトン、ガタンゴトン


「お前の名前を呼ぶとな、、、、、」

ゴオオオオオオ

「え!?なにー?」



瞬間、全てが真っ黒になった。



何だか、何だか…

誰かに熱く抱き締められているような そんな感覚に陥った。



だから

毎日「今日も2列編成だよ!」と確認できていたものが確認できなかった。
何列編成の電車だったのだろう。


そんな事が頭をよぎったのだけれど


実際冷静なんかじゃなくて、むしろ、心臓バクバクで何が起こっているのか分かんなくて
とりあえず、誰かのぬくもりを感じていることだけは分かることが出来た。


「なんてな、」

「えっ?」

「なんでもない。」

「ええ〜〜〜〜!!」


踏み切りの遮断旗が上がるのが見えて、
それにあわせて待っていた人たちが一斉に歩き出す。
キョンも同じように歩き出し、慌てて私も歩き出す。
何事もなかったのようにスタスタと歩いていく背中を見て
ふと、思った。

(今さっきのは、キョンの不器用なりの愛情表現だったりして――)


そうだ、考えてみたらそうだ


「おい」


キョンはぶきっちょでぶきっちょの中でも最高ランクのぶきっちょ(?)で
人があんな居る所でだ…だきしめるだなんて!





あたしの返答に対する答えなのかもしれない!

いやでも待って、
もしかしたら何かから私をかばう、まもる為にこう…
覆いかぶさってくれたのかもしれない……



ありえる…


「おい!!」

でもでも、やっぱり普通に考えて…


!!」

「えっ?」




ぐいっ



「何ボーッと突っ立てるんだ早く行くぞ。寒い。」

「え、あ…えっ?ねぇ、キョン…?」

「なんだ」





「手、つめたい。」




「悪かったな。"誰かさん"が突っ立ってるから余計に冷たくなったんだ。」

「もう、""って呼んでくれないの?」

「…考えとく。」


そう言ったキョンの顔は何処か照れくさそうな横顔で、
寒さのせいか、それとも、本当に照れてるからなのか
ほっぺたが真っ赤だった。(ついでに鼻もまっかっかだった)



「仕方ないから私の手であっためてあげる!」



これから急展開になりそうな、予感。




(俺さ、お前の名前呼ぶとな、鼻とほっぺたが赤くなるんだよ。いつだってな。)