ドリーム小説 「ねぇ、キョン?」

それは突然のことだった。
朝比奈さんレベルでも気づかないほどの突然の事だったと思う。

「なんだ」
「キョンはあの子のことが好きなの?」
「……あの子?」
「そう、あの子。」
「いや誰だよ」


 っていう子だったと思うんだけど。」

啜っていたお茶が勢いよく床へ飛んでいった。それは動揺してたからか図星だったからか唐突過ぎた事だったからかは分からないが
とにかくそいつの名前はあまりにもサプライズ過ぎた。






ある日の放課後SOS団室には全メンバーが集まっていたが、特にする事が無く
のんびりと過ごしていた矢先だった。
やっぱり寒い時期にお茶は温まるなぁ、と窓から見える運動部の練習光景を見てしみじみしながら聞いたその言葉。
何もお茶を飲んでいる時に言わなくてもいいと思う。




「ちょっとー!ぼーっとしてないでお茶拭きなさいよ!」
「これ、雑巾です…」


おろおろしている朝比奈さんの小さな手から湿った雑巾を取り拭く。
冷たかった雑巾が温かくなっているのが分かった。
ある程度拭き終わるとハルヒと目が合った。





「で、どうなの?好きなの?嫌いなの?」
「すまん。よく分からない。もう一度言ってくれ」
「だーかーらー!あんたはあの子が好きなの?って聞いてるのよ」
を俺が?好き?どうして?」
「あたしに聞いても知らないわよ」


ってあの図書委員長だよな?同じクラスで結構派手な演説をしていたちっちゃい奴。
凄く説得力があって、他の候補委員をかなりの差で破っていた記憶がある。
でも明るくて地味な要素は全く無くて、誰にでも話しかけてくる。
確か谷口らへんが気に入っていたような…



しかし、と俺は接点が無い。あると言えば図書館でカウンターを利用する時に話をするだけだ。
何処をどう見ればそんな事になるんだ?


「ふんっまぁいいわ。あーちょっと購買部に行ってホットドリンク買って来る!」
「あ、そうか」
「みくるちゃんも行くわよーっ」
「は、はぁぃっ!」



慌しく出て行ったハルヒ達に取り残された俺たちはただぼーっと突っ立っていた。(いやちゃんと座っていたけれども)
長門はいつものように微動だにしないまま相変わらず分厚い本を読んでいるし
古泉も嫌な笑みをこっちに向けていた。悪いが俺はそっち方面じゃないぞ。



「何が言いたいんだ」
「いえ、僕もさんは良いと思ってるだけですよ」
と仲良かったのか」
「よく図書館を利用するので結構話してる方だと僕は思ってます。人気者の彼女からしたらどうかは分かりかねますが。」
「そうか。」
「僕も気になったんですけど、さんの事気に掛けているのですか?」


どいつもこいつも恋愛事に興味を持つのは分かるが、もうちょっと遠回しに聞いてほしいものだ。
しかし、どうしてそんな風に言われなきゃ行けないのか分からなかった。



「え、分かってないのですか?」
「さっぱり分からん。俺とには何の接点も無いんだ。当たり前だろ」
「……これは言うべきでしょうか」
「俺に聞くな。俺としては聞きたいけどな。」
「んーですが一度自分の胸に聞いてみてください。それから答え合わせをしましょうか」


自分の胸に、ねぇ…。








本当に心当たりが無い。…ただいつも視界の中に居るのが不思議だった。
でもそれはが忙しく動き回っているからだよな。


(じゃあ授業中も視線の中に居るのはなんでだ?)

図書館を利用する時も別に変わったことは無いと思う。
ちょっと身なりを改めて入るくらいで、別にそれくらいは普通だろう?
公共の施設を使用する場合はちゃんとしなければならないと習ったじゃねぇか。



(がカウンターの時、妙にドキドキするのはなんでだ?)

朝礼の各委員のお知らせで図書だけ真剣に聞くのは、いつも図書館を利用してるから
ちゃんと聞かなきゃいけないと思ってるからであって、




(本当にそうか?)

部室から眺めるグラウンドにいつもが居るのは、あいつが陸上部に入ってるから
当然なわけで、視界にも入る。何しろ活発に動いてるからな。





(それはお前が目で追ってるだからだろう?)

それにちっちゃい癖によく動くな、よく笑ってるな、運動神経良いよな、って思うのは
別に誰でも思う事だろうし、普通じゃないか。その証拠に古泉だって思ってたじゃねぇか。






(なぁお前実は気づいてるんだろ?)

よく声が聞こえるのはアイツの声がでかいからであって、
そんな………







(本当はのこと好きなんだろう?)







「別に好きなんかじゃ無い、ぞ!…多分。」
「素直じゃないんですね。どうしますか?答え合わせしますか?」
「…不本意だが100点を貰いそうだから遠慮しておく。」
「ふふっそうですか。」




……。


あぁ俺は何を考えているんだ。別になんでもないのにどうしてだ?
分からない、何がどうなっているのか。




「胸クソ悪い。」
「では、窓辺にでも行って外の空気に当たって来ると良いですよ。」
「そうさせて貰うぜ」







団長席にどすんっと座り下を見下ろす。
日は照っているのに風は冷たく、グラウンドで体を動かしている連中は寒そうに見える。
何しろ男女半袖半ズボンで駆け回っているのだ。傍から見れば寒中水着大会に見えてしまうのも無理はないと思う。
時折強く吹く秋風を深呼吸で吸ってみる。

あぁ、寒い。

だけど何故か心地よくてもう一度吸う。



……だいぶん落ち着いてきた。そろそろ窓を閉めないとハルヒが帰ってきたときに「寒いじゃないの!」とどやされるだろう。
さっさと窓を閉めて熱を篭らせねば。



しかし、それは出来なかった。







「あれーっ?!キョン君じゃなーい?!おーっい!」






地上から聞き慣れた声が聞こえ、しかもそれは俺に向けた物だったため、とっさに下を向いて声の主を探した。
…探さなくても聞いた瞬間に分かった俺は病気なのかもしれない。


「やっほー!やっぱりキョン君だったんだね!今部活中〜?」



やっぱりアイツだった。今俺の頭の中をゆっくりと走っているだった。
はいかにも陸上競技をしている所と思わせる服を着ていて、あぁ部活中だったんだなと思った。
こいつは勉強も出来て運動も出来て、所謂出来る人間だ。こういうところに尊敬を感じる。
陸上部に入っていながら背が小さく、よく周りにからかわれていた気がする。
だけどやっぱり足は速い。



「あぁそうだ。」
「キョン君は何の部活入ってたっけー?」


4階と地上で会話をするのは難しく、どんな些細なことでも大声を出さなければならなかった。
こんなんじゃ古泉はもちろん購買部に居るハルヒにも会話が聞こえるんだろうな。



「奉仕活動部だ。」

もちろんそれは表面上の話。
こいつに『涼宮ハルヒを大いに盛り上げるための団』と言った所でどうにもならないだろう。



「へぇ〜それはすごいね!生徒会よりずっと凄い!」
「ところでお前はここで何してんだ?」
「あたしはねーちょっとおサボリかな?っていうのも今休憩時間なのー!」
「そうなのか。部活は楽しいか?」


不思議なほど次から次へと話が出る。
例えるなら煩く質問攻めをしてくるインタビュアーだ。
だがは一切嫌な顔をせずニコニコと笑いながら答えては、俺にも質問をしてくる。
こんなに話したのは初めてかもしれない。
元々接点が無いのだから、当たり前なのだが。




10分か15分くらい話していたところで、が校舎台にある時計を見つめた。
そこで俺は悟ってしまった。





「ごめんーっ!もう行かなくちゃ!!」
「そうか」
「うんっ!じゃあ……」







このままでいいのか?
良いわけ無いだろう。







「あ、おい!」
「?なにーっ?」



何を思ったのか本当にわからないんだが、脳が勝手に『止めろ』と指示を出して、それがそのまま声となって出てしまった。
無意識に呼び止めたは良いが、何を言えば良いのだろうか。
掛ける言葉がたくさんありすぎて混乱しそうだった。

やっとの思いで見つけた言葉を発した。




「練習頑張れよ!無理すんなよ!」
「あははっそれどっちなのーっ?でも、ありがとうー!程々に頑張るーっ」
「おう」
「じゃあ、キョンもファイト!明日来たら、がんばったで賞をあげるから楽しみにしててねーっ」
「ちゃんとトロフィーもよろしくな」
「はーい!じゃあ、またねーっ」



最後ににこっと笑って走っていった。




「初々しいですね。」
「黙れ」


その場でしゃがみこんだ俺は長門の後ろ姿をぼーっと見つめていた。
俺は一体何がしたいんだろう?なんて自分に聞いてみたが、分かるはず無くて、ひたすら溜息を吐き続けた。
酸欠で倒れたとしても古泉だけには助けてもらいたくないな、なんて暢気な事も考えてたのは秘密だ。

まだ長門の小さい背中を見つめていた俺に流石に危機感を感じたのか、古泉がにょっと顔を覗いてきた。
だから、その笑みはやめろって言ってんだろ。



「顔赤いですよ」
「はっ?誰がだよ」
「アナタしか居ませんが。」
「ば、バカ言え!なんで顔が赤くなるんだよっ…」
「なんででしょうね。僕が知りたいくらいですが」



なんとなく嫌気がさしたのでニヤケ面から窓の外へと目を移した。
相変わらずの高い声が耳に入ってきて、元気に動く姿を目で追ってしまう。
…やっぱり重症なのか、俺。



でも、

何故か俺は満足感、と言うのだろうか。分かりやすく例えれば片思いの人と会話を交わす時のあのドキドキ感?のような
そんな気持ちだった。
こんな感情、初恋以来じゃないのだろうか。…って俺はどれだけ無頓着なんだ。



「ちょっと不気味ですよ、その顔」
「何のことだ」
「顔、ニヤけてますよ。」
「………」
「おや、否定しないんですね。」
「図星 とでも思っといてくれ」


今ならこいつと仲良くしてやっても良い気がする。暇つぶしのゲームを何十回戦でも付きやってやれそうだ。
それくらい気分が良かった。別に大したことはしてないのにな。

早く明日にならないかな、とまで思った俺は確実に重症だな。
明日が待ち遠しいなんて思うのも久々過ぎるぜ。

こんな新鮮な気持ちを感じるとは思わなかった。
相手に対する感情がちょっと変わっただけで、ここまでなるものなのか?
恋愛感情は恐ろしいものだ。


ハルヒが帰ってくるまでとどうやって親交を深めようか考えたのは、俺だけの秘密だ。
あぁ早く明日になってくれないかな。


一周年記念☆御礼小説*3作目* キョン×同級生

爽やかで青い春!(=青春チック)でした><☆
どうしても爽やかな小説が書いてみたかったんです。あの初々しさ、というかなんというか…(上手く言えない)
なのでシメが弱いですね(。´Д⊂)ごめんなさい;;
一番頑張ったのは、キョンが自覚するところ。(そこかよ)
やっぱり元気なヒロインは書きやすいです♪私の書く夢のヒロインって性格って似てるのかもしれない(苦笑)
でも元気なのはいい事ですよね★よく笑う子も印象とかいいですしねv
人生笑って明るく生きたいですヽ(*´∀`*)ノ