ドリーム小説
「なぁなぁ!!」
「ん?」
「ここってどうなんの?」
男は図々しくに近付いて教科書を押し付けている。
それには困った顔などせずに「あーここはねぇ」と丁寧に教え始めた。
……気に食わない。
今俺はちっぽけな図書室で勉強会に参加していた。
メンバーは、国木田・谷口・、そして俺といった感じだ。
どうして一人女の子が混ざっているのか?それはだな、ちょっと恥ずかしいが俺の彼女だからだ。
そもそも勉強会を開いたのはであり、もちろんそれに着いていくのは彼氏の役目であろうと思いここに居る。
が、しかしどうも気に食わない。目の前で繰り広げられる嫉妬攻撃。顔面にチョキで殴りたくなる勢いだ。
そもそも何で彼氏の俺が彼女の目の前に座っているんだ?普通隣だろ。
「……キョン?どうしたの??」
キョンの顔変だよ、と笑いながらは俺の異変を聞いてきた。
「いや、別になんでもない。」
「そう?分からないとこ合ったら言ってね?分かる範囲は答えてあげるから。ね?」
そう優しく気を遣ってくれるに俺はなんとなく幸せな気分になっていた。
こんな優しい彼女を持てた俺はなんと……
「幸せ者なんだろう でしょ?キョン。」
嫌味な微笑みを俺に向けている国木田。そこまで俺は顔に出ているのか?
「うん、もうバッチリ出てるよ。そんなに気に食わないならキョンも聞けばいいじゃない」
どうせ苦手なのいっぱいでしょ?と付け加えてニヤニヤ。
いかにも僕は頭が良いからねと言わんばかりの発言に少しイラっと来てしまった。
確かに国木田の言う事は適当だ。しかし…こう……なんていうのだろうか。俺にもプライドというものがある。
目の前で谷口が何度も何度もに話しかけているのを見つつ、俺は感情の制御に務めていた。
図書室へ向かう際に谷口がこんな事を言ってきたからだ。
「お前どんな事があっても嫉妬するなよ?」
「いきなりなんだよ」
「彼氏として、場の雰囲気を壊すような事しちゃい・け・な・っぐふ!いってぇな」
俺の前で片目ウィンクで人差し指をチラつかせるのが悪いんだろ。気持ち悪い。
「はは、まぁさお前の愛情チェックをさせてもらうぜ」
「勝手にしやがれ」
わざと、だというのは分かっちゃいるがいくらなんでもやりすぎだと思うのは俺だけじゃないはず。
谷口はしつこく何度も分からない問題に直面しては、自分で考える事をせずにに聞いている。
しかも身体を寄せてだ。お前、それはいくらなんでもないだろ?
だいたい星夢も星夢だ。そんな鬱陶しいことをされてると自覚しておらず、何度話しかけられても
態度を変えず優しく丁寧に教えている。そんなに優しく教えてもアイツには効果無いと思うんだがな。
時々ちらっと俺を見てはニヤニヤする谷口。さっきから白紙のノートにも目を写すとまたニヤっと笑ってきた。
「キョンちゃんと進んでるのかぁ〜?」と谷口。
お前のせいで進んでない事くらい分かるだろうが。
「キョン具合でも悪いの?…大丈夫?」
「キョンが具合悪いわけないだろ!な、神田」
そう言って谷口はの肩へ軽々しく手を回し、同意を求めた。
さすがのもこれには戸惑っていた。
そしてその瞬間俺は理性か何かの切れる音が聞えた。
―ガタンッ!!
乱暴に立ち上がり谷口に肩を組まれているの右腕を引っ張って立ち上がらせた。
「え、ちょ、ちょっとキョンっ!!」なんて困っている言葉を無視して俺は図書室の古びたドアを荒々しく開け放った。
「谷口。あれはやりすぎだと思うよ。」
「いやーだってあれぐらいしないとアイツ行動しないじゃん」
「ったくー…中学の時から変わってないね。」
「お前もだろうが。」
「キョンっ…いっ…痛いよ……」
怯えながら聞くその声に俺はなんてことをしたんだろう、と思っていた。が、そう思っていても足と手が弱まらない。
俺は細い手首を掴みながらどんどん歩いていった。目的地は不明。
最初は大声を上げて「何処行くの?!」「離して!」と抵抗していたも今じゃ無言で俺に引っ張られている。
放課後と言う事で人はあまり居ないが、やはり少し目立つようですれ違う奴の視線を浴びる。
行く道ある道を進んでいるためもう何処が何処だか分からない。そう思ったときふと視界が明るくなった。
校舎を出て渡り廊下へ出たのだ。俺はそこで立ち止まる事無く中庭へと向かった。
中庭の所にある大きな木の下で俺は立ち止まった。それと同時に手の力を弱めてを開放した。
「…………ねぇ、キョン。いきなりどうしたの?」
「……」
俺は何にも答えなかった。嫉妬しただとか、他の男がお前に触れたからなんて言えるはずが無い。
そんなの軽々しく言えるのは谷口しか思い当たらない。あぁ、あのエスパー野郎も言えそうだな。
だが、こんな鈍い彼女が自分で気付くとも思えなかった。
秋のちょっと冷たい風が吹いた。俺はに背を向けたままでお互い沈黙。
今どんな表情で俺の背中を見ているのか、いやもしかしたら見ていないのかもしれない。居ないのかもしれない。
とにかくどうなっているのか分からなかった。
「…え、っと……」
は何かを話そうと頭の中で試行錯誤しているみたいだった。
無言で話すのを待つ。
「…そ、…の…えと、あ、ありがとう…。」
思いがけない言葉が聞えた。…ありがとう、だって?
なんでそうなるのか理解出来ず思わず後ろを振り返ってしまった。
「なんでお礼を言うんだ?」
少し顔を赤らめながら悪戯好きな風が起こした髪の乱れを整えながら唸っていた。
の髪は本当に綺麗だ。思わず手を伸ばして触りたくなるようなサラサラの黒髪にロングストレート。
これぞ、日本人だろうと思った。またその黒髪が何とも言えない程顔に合っていて美人さを高めていた。
こんな時にこう思うなんて、俺はどうしたことやら。
「…キョ、キョンは……その私を助けて…くれた、んでしょ?…」
「……?」
何を言ってるのかサッパリ分からない。いや間違ってるわけではないのだが、ちょっと意味が違う気がする。
そんな俺の考えがまた顔に出ていたんだろう。が続けて話をした。
「谷口君から私を守ってくれたんでしょ?じゃなきゃ……キョン怒ったりしないもんね。」
「…あぁ、いや…まぁ…。」
「あはっ、キョンは優しいね。私には勿体無いくらい……ありがとう。」
何か複雑だった。俺は嫉妬してをここまで強引に連れて来たのに良い者扱いされてしまった。
「違うんだ!俺は……」
気付けば俺は正直な気持ちを話そうとしていた。何故かこのままだと気が晴れないからだと思ったからだろうか?
「…谷口が軽々しくに触ったり、しつこく話しかけてたのが嫌だったんだ。」
「……え?」
「何か彼氏でもなんでもない奴がと仲良くするのが…気に食わなかった。」
俺らしくない言葉が次から次へと出てくる。こんなのハルヒに聞かれていたらどうしようか。
まぁあいつは今旅行中だから聞かれているはずないのだが。
「…それって……その…」
俺の言葉を聞いて何故か嬉しそうには核心を突こうとしている。
その核心を突かれる前に自分で言ってしまった。
「…嫉妬だよ。」
どうしてだろう?
その言葉を聞いて更に顔を赤らめて、しまいには俺に抱きついてきた。
「キョンっ…うぅ…」
そして何故か泣き声が聞える。おいおい、どうしてそこで泣くんだよ。
「ふぇっ…ひっ……うぅ…」
「。」
そう言って俺は軽く泣きじゃくるの頭を撫でてやった。
すると俺を抱きしめていた力が更に強くなった。
そして聞えた小さな小さな声。
「キョン君……大好き。」
あまりにも突然過ぎて顔がすぐに緩んでしまった。傍から見ればとんでもないバカップルだよな、俺ら。
そんな事を頭の隅で考えながら、俺もこう呟いてやった。
「可愛すぎ。」
後日談。
あの後は頬に口付けをしてきて(顔に似合わず大胆なことをするやつだと、この時知った)
その場を何故かバッチリハルヒに見られていた。
本当に不思議だが、その場にハルヒが居合わせていたお陰でその日急遽部活が開かれて尋問が行われた。
ちなみにも一緒に尋問&入部を強制されたのは言うまでも無い。
もちろん谷口と国木田はフルボッコにしてやった。国木田まで巻き込んでしまったのは申し訳なかったが。