ドリーム小説
遅い。…遅すぎじゃない?可愛い恋する乙女を放課後の教室で待たせるなんて。
何やってんの?ったく…遅すぎだよ!いくらなんでも…。
ふと窓の下に幸せそうに下校するカップルが見えた。
羨ましいな、……一樹のバカ。
小さな時間
よく晴れた日の放課後、ついさっきまで雲ひとつ無い青い空だったのが
いつの間にかオレンジ色の空になって高かった太陽も低い位置まで下がってきていた。
彼氏と一緒に下校したいって思うのは、付き合ってるなら当たり前に思うことで。
「今日委員会があって少し遅れますが、もし良ければ一緒に帰りませんか?」
なんて一樹が言ったから帰れないよりずっと良い!と思い、待つこと1時間。
一樹は、超能力者らしく涼宮さんの暴走を止めるための『機関』に属しているらしい。あ、これ秘密ね?
だから涼宮さんが開いているSOS団に入団しているため、いつも一緒に帰れることが無い。
(遅くまで残っちゃ行けない、という一樹の言いつけもあるし。)
最初は、「私と涼宮さんどっちが大事なのよ?!」と昼ドラ的な感じで突っかかってたけど、
まぁそういう事情なら仕方ないよね?と最近は思えるようになって、一人寂しくトボトボと帰ってた。
だけどやっぱり一緒に帰りたい、っていう気持ちは大きくて、口には出さないけど実はもの凄く寂しかったり。
だからこうして一緒に帰れる日はとても大事にしなきゃ行けないんだよね。一分一秒を大切にして過ごす。
まぁクラス一緒だから、こんなのは私のワガママでしか無いんだけど…。
でも実際有言実行は難しいわけで、特に私なんかは素直になれないからいつも無駄に過ごしてしまう。
…勿体無いね。
とりあえず今日出された課題やら宿題をやっておこう、と思いやったものの一樹が現れる気配が無くて
さっきから立ったり座ったり伏せたりの繰り返し。実は待つのはあんまり好きじゃなかったりする。
でも、一樹のためなら頑張って待つもんね!と言い聞かせて辛抱強く待ってる。
絶対来たら怒ってやる。アイス奢らせてやる!それから、手繋ぐことを強制させてやる!!
それから〜と罰を考えてると戸口から足音が聞えた。…一樹だ。
「すみません、提案がなかなか通らず時間が大幅に延びてしまいました。」
「遅いっ!」
「申し訳ないです。」
普通なら「お疲れ様」と言って声を掛けるんだろうけど、私はそんな優しい女の子じゃない。
…のはずなんだけど、一樹の疲れた顔を見て自然と言ってしまった。
「…御疲れ様です。」
「おや、が珍しく僕に気を遣ってくれてますね?」
「なによ。」
「いえ、嬉しいなと思っただけですよ」
ふっと笑って一樹は素直に思ったことを口に出しては、私を困らそうとするから困る。
そして案の定私は罠にハマって、照れてしまった。…うぅ。
「寂しかったですか?」
「は?」
「ふふ、寂しかった?と聞かれて素直に頷くでは無い事ぐらい分かってますけどね。」
「…意味分かんない。」
「その分、が珍しく素直になった時、それはもうとてつもなく可愛いですよ。」
「う、うるさいなぁ!」
「照れたもなかなかそそられます。」
「……。」
「からかい過ぎましたね、すみません」
なんて笑いながら言ってる一樹。申し訳ないなんて絶対思ってないくせに!
そんな一樹に軽いグーパンチをかます。こんにゃろう。
「でも、たまには素直に甘えてきてほしいですね。」
「私の性格知ってて言ってるの?」
そして全く意味の分からない行動を取った一樹。
満面の微笑みをしたかと思えば、両腕を開いて「ほら、どうぞ?」と言った。
「何がしたいの?」
「きっとのことでしょうから、自分から甘えてこないと思って。」
「だから腕を広げてるの?」
「これならも遠慮無く甘えれるでしょう?さぁ、さぁさぁさぁ!!」
両手を広げながら近付いてくるのと同時に後ろへたじろぐ私。
絶対飛び込まないからっていうか今時そんな事する高校生居ないよ。恥ずかしいからやめてよね。
フイっと一樹から視線を外して横目で見てやる。
飛び込む気配が無いのを感じたみたいで、残念そうに広げた腕を元の位置に戻した。
だけど笑顔だけは持続していた。(でも困り笑い。)
「やはりは手ごわいですね…」
「狂猛な野獣みたいな言い方しないでよ」
「僕はとこういう時間があまり過ごせなくて、寂しいのですがはどうですか?」
何よ、藪から棒に。
…寂しいに決まってるでしょ、って言えるはず無いから黙り込むしかないじゃない。
ホント何処までも素直じゃないなぁ、私って。
素直に言えばもっとくっつけるかも知れないのにね。なんて言い聞かせてもいえないものは言えない。
でも…たまには素直に言うべきかな?あんまり気持ちを伝えない子ってイヤだってどっかの雑誌に書いてたっけなぁ。
しかし数秒後、いい子ちゃんになった私の脳を恨むことになる。
「ちょ、ちょっとは寂しい…よ。」
「ふふっ今日はどうしたんですか?珍しく素直と言うか…気持ち悪いほど素直ですね。」
「はぁ?なにい、わっ」
抵抗の言葉を最後まで言う事が出来なかった。何故ならば、今一樹の胸にすっぽりと抱かれているから。
久々に一樹のぬくもりを感じた気がした。
「素直なは可愛いですね。」
「…普段から素直じゃなくて悪かったわね!」
「いえいえ、普段から素直じゃないからこその可愛さですよ?」
複雑な気持ちになり返答に困っていると、自分の背中にある大きな手がもぞもぞと動いた。
何してるんだ?と思いながら、その手は背中のちょうど真ん中辺りをさわさわとしている。
まさか…と思った時には遅かった。ブラのホックを見事に外された後だった。
思わぬ行動に一樹の心地よかった胸から離れようとしたが、強い腕の力に敵わなかった。
「ちょっと一樹!何してんのよ!」
「どうかしましたか?そんなに暴れて。」
「とぼけてないでよっ!ブラのホック勝手に外さないでよー!」
「あ、スミマセン。手が滑ってしまったようですね…」
うそだぁーっ!!
今一樹を嘘発見に掛けたら絶対引っかかる、いやそんな事をしなくても分かるくらいバレバレな嘘をついた!
そして更に一樹は、『今暴れてごらんなさい?キミの服の中にある僕の手にキミの柔らかい胸がタッチしてしまうぞ?』と言わんばかりに
腕の力を弱めたと同時に片手をシャツの中に突っ込んできやがった!!
くっそー…調子乗るんじゃねえ!
「ふふ、やはり人肌は温かいです♪」
「アホか!今すぐシャツの中にある手を抜け!!」
「おやおや、は雰囲気という物をもっと大事にするべきですよ?」
「知るかーっ!いいから、今すぐに抜きなさい。じゃなきゃ…明日から口きいてやんないっ」
寂しがり屋で彼女一筋の一樹にはキツい爆弾を投げてやる。
どうやらそれは効いたらしく、手の中にあったごつい手はゆっくりと消えていった。
多分こいつに耳やらしっぽがあれば確実に垂れ下がっているだろう。…それはそれで可愛いらしいかも。ってバカ!
「委員会で遅くなったお礼でもしようと思い、したのですが…」
「そんなお礼要りません。ていうか、ただ一樹が触りたかっただけでしょ!」
バレてちゃかないませんね…と残念そうに言う一樹に同情をしてやろうなんて思わなかった。自業自得だ!
少し乱れた心に落ち着きが戻った頃、さっきまでオレンジ色で一色だった教室が徐々に黒く染まっている事に気付いた。
ハッとして時計を見ると時刻はもう6時半。色々と遊びすぎていたみたい。
一樹も窓の方を見て「そろそろ帰りましょうか」と言ったので荷物を持って教室を後にした。
「…あの、さ。」
「はい、なんでしょう?」
少し暗い昇降口で靴へ履き替えた所で一樹へ遅れたお礼をどうしてもしたい?と聞いてみた。
「そうですね。させてもらえるのならば、させて頂きたいですが。」
「じゃあ、さ。…家に着くまで手繋いでくれない?」
こんな頼みごと普段は滅多に恥ずかしくて言わないだけに、心臓の鼓動がドキドキドキドキ...と五月蝿かった。
なのに、一樹はそれをふふふと軽く笑ってムっとした。せっかく人が頼み込んでやってんのに!!
でもそう思ったのも束の間だった。
「お安い御用です。むしろ、それがお礼でいいのですか?」
「…うん。」
「ふふ、良いでしょう。ただし、途中で離したいと言っても絶対離しませんよ?」
「私も絶対離しませんよ?」
一樹の真似をしてやると苦笑されてしまった。まぁいっか!
多分、通学路が長くて良かった。と思ったのは人生でこれっきりだと思う。
小さな幸せを噛み締めながら、明日も帰れることを祈った。