■その1
もしも、星野とうさぎが教師と生徒の恋人だったら。
外の廊下から女子生徒たちの黄色い声が嫌というくらい聞こえてくる。
その理由はどうせイケメン先生たちのせいだろう。
数学担当の大気先生は、
大人って感じで確かに素敵だと思うしたまに見せるあの笑顔がレア。
美術担当の夜天先生は、
クールだけどなぜか惹き付けられる力があって猫好きなのが可愛いと思う。
もちろん星野先生だってかっこいいと思う。
文武両道出来て(でも古典は無理らしい)、みんなに優しい。
そりゃ人気が1番あるのも納得だ。
だけどそれが気に食わない。
彼女が居るのにチヤホヤされて凄く嬉しそうな顔するしプレゼントとかも断らない。
まぁ彼女が断っちゃ可哀想よ!とか言うからだろうけど、それでも断って欲しいなとか思っちゃうものなのに
先生は全然分かってない。
今日だってそうに決まってる。
こうやって理科室で待たせてても絶対何も思って無い。
本気で怒ろうだなんて私も考えて無いけれど、早く会いたいのに。
『きゃーっ!!星野せんせー!!!』
『ちょ、みっみんな落ち着けって!!』
相変わらず今度は下の階の廊下から声が聞こえる。
どれだけ追い掛け回されてるんだか。アイドルにでもなればよかったのに。
そう、それからイケメン先生たちは歌も上手いのだ。
この間の文化祭でファンクラブが発足したくらいで、確かにそれは私も頷ける上手さだった。
息もピッタリで決まっていてとても慣れている感じがした。
なんでアイドルになんなかったの?といつの日か聞いたことがあったけれど
「アイドルになってたらお前と会えなかっただろ?」ってはぐらかされた。
「・・・・先生なんて先生になる前から見つけてましたよーっだ。」
もう帰っちゃおうかなぁ、と思い立ち上がったのと同時に後方の扉が開く音がして
首だけで見ていると先生のシルエットが見えてきた。
「鞄なんか持ってどうしたんだよ」
「・・・・・・・帰ろうかと思って」
「え?なんでだよ」
ほらね、やっぱり何も詫びろうとしないし気づいちゃいない。
ついカッとなり、机の上に箱を投げつけた。
中の物が割れた音がしたけどそんなの知らない!!
「先生のバカッ!!!!」
箱を投げつけた時点で腕が捕まってたから逃げられるわけ無くてあっさり御用。
これで脱獄失敗連続20回目くらいかな?そろそろ更新ストップしたい。
何そんな怒ってんだよ とまた冷静な先生がムカつく。
「あの箱の中身何か知らないけど割れてるぞ多分」
「別にいいもん!!私が食べるから!」
「は?俺にくれるチョコじゃないのかよ」
誰も先生にあげるなんて言って無いわよ!と言って強く握られている腕を離そうとする。
それに私なんかのチョコなんて不味いし、嬉しくないでしょ!! なんて付け加えながら。
「何言ってんの?」
「っだから!! みんなからチョコ貰いまくってるのに私のチョコなんかいらないでしょって意味よ!」
「誰がそう言ったの?」
「・・・・・・誰も言ってない。…けどっ」
「何?」
みるみるうちに先生の目つきが睨むようになって
声のトーンが恐ろしく低くなっていってる事に気づいた。
これは流石に怒らせてるな、と思うと声がどんどん小さくなって最後には何も言えなくなってしまった。
「気は済んだか?」
「・・・・はい」
「よしよし。じゃあチョコ。ちょうだい」
「わ、割れてると思う、よ。」
「お前まさかハート型とかにしてないよな」
「・・・・・・・・。」
先生の溜息を聞きながら恐る恐る投げ捨てた箱を開けると
キレイな亀裂が入っていた。真ん中に。
「おー綺麗だなぁ。まるで最初からこうやって作ったみたいだな?」
「なっ…そんなわけないでしょう?!」
「冗談だって」
亀裂からまた更に割って食べやすいサイズにして食べてもらい、何とか味の合格を貰った。
・・・・あれ、そういやチョコの袋たちが無い?
「先生、みんなのチョコは?」
「貰って無いよ」
「え えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!??!?!」
「だからここまで来るのに時間かかったんだよ。大気先生と夜天先生に協力してもらった」
「なっなっ・・・なんでぇ?!」
「お前のしか要らなかったから」
「・・・・・・・・・・・」
「んじゃ、ご褒美にキス貰うぞ」
「ぁ、え、ちょっまっ、」
やっぱり先生にはまだまだ敵いません。
***
■その2
もしも、星野とうさぎが夫婦だったら。
今年もバレンタインの日が来た。
バレンタインのイベントは学生だけのイベントだってみんなは言うけど
私はこういうイベントごと大好きだから何歳になっても参加してしまう。
相手はもちろん愛する旦那さんしかいないけれど。
いつもいつも仕事で忙しい星野は会える日が少ない。
だからバレンタインも仕事で1日中ぎっしりだと言う。
そんな星野にいつもありがとうとお疲れ様の意味を込めて
ちょっぴりお酒の入ったトリュフチョコを贈る事にした。
シャンパンなんかも準備して万端。
零時ちょっと前くらいに帰ってきて案の定ビックリしてくれた。
「これ全部お前が作ったのか?」
「うん!ありがとうとお疲れ様の意味を込めて作ってみたの」
「凄い嬉しいよ…ありがとう。」
本当に嬉しそうな顔をするもんだからこっちまで幸せになる。
瓶の栓を抜いてワイングラスに注いでくれる。
何だかいつもより数倍背伸びをしている感じが妙にくすぐったい。
「じゃあ…改めまして。 ハッピーバレンタイン!」
「ありがとう」
「「乾杯ー!」」
早速星野は箱を開けてトリュフを食べてくれた。
「美味しい…かな?」
「凄く美味しいぜこれ!すごいな」
「えへへっ ありがとう」
やっぱりこういうイベントは無くちゃ、と思った。
いくつになっても楽しいイベントはずっとあってほしい。
そんなことを思っていると、すっと星野が手を出してきた。
「右手出してみて」
「うん?」
大人しく出してみるとポケットからなにやら指輪を出して
薬指に通し始めた。
しばらくぼーっと見ているとプレゼントだよ、と笑った
「キレイ・・・・・・。ありがとう!でも、なんで?」
「俺もサプライズしようと思ってたんだ。そしたら先にやられた」
「凄いサプライズよ!!ありがとう…星野からの贈り物ってあんまり無いから大切にするね」
「うん。俺もやってよかったよ」
そう、星野はあまりプレゼントを贈らない。
多分自分はお金持ちだって見せてるようで嫌なんだと思う。
それだけに今回の事はサプライズ過ぎた。
やっぱりこの人と結婚してよかった。
「ねぇ星野」
「ん?」
「大好き!!!」
「俺も愛してる」
イベントは愛の絆を深くしてくれる大切な日。