たとえば、あたしが星野と知り合ってなかったら?

たとえば、あたしと星野が幼馴染の関係を保っていたとしたら?


どうなってた?



「ん、っ」

ガタン

「ぁ、はぁ…」

ガタッ



苦しくなって思わず胸を軽く叩く。
すると、熱いものが口から離れて息が出来るようになった。

「星野…激しい…。」

「あ、いやその…、ごめん…つい…」



星野にきつく抱きしめられたまま、人の気配にびくびくする。
いつ人が来てしまうか 誰かに見られてるんじゃないか


誰かに この幸せな時間を 厭らしい目で 見られていないか とか。


トップアイドルグループ "スリーライツ" のボーカル 星野 光。
スリーライツ という言葉を知らない人はそう居ないであろう。
ましてや、星野を知らない女の子は居ない。
誰もが一度は見惚れる程の ルックスに声。

そんな星野に抱きしめられてる私は


ただの女子高生。


そう、本当にごく普通の女子高生。


どうしてトップアイドルの星野とあたしに繋がりがあるのか?


それは幼馴染だから。

スリーライツのメンバー 大気 光・夜天 光・星野 光
3人とも幼馴染。

昔から4人いつも一緒で 何をするにしても4人。
1人でも欠けてたら楽しくなかった。




4人でいつまでも一緒に居られると思ってたの。

そう いつまでも、ね。




誰も悲しまないで一人一人が幸せに―







ある日―彼らはいきなりアイドルになった。
それも日本を代表するトップアイドルに。

あたしたちの日常は一変した。


すべてが変わった。


4人で遊ぶこと以前に集まる事も話すこともなくなった。
家だって隣近所だったのにスリーライツとなった3人はどっかのマンションへと移った。
さも当たり前のように消えてしまった。


だけど、4人で集まることはなかったけれど、
星野とは交流のあった私。


「よっ 元気にしてるか?」

「まあまあ…かな、星野は?」

「うん。俺もまあまあかな?」

「なにそれー」


たまに連絡が星野から入ってきて、ちょっとお茶して。
そんな事が何回も繰り返されるうちにあたしは星野を"ただの幼馴染"として見れなくなった。
それは向こうも同じだったみたいで。


「なあ…おだんご」


いつものようにクラウンでおっきいパフェを食べさせて貰ってる時だった。


「なあに?」

「俺と付き合ってくれない…かな?」


意味が分からなかった


「え?どこに行くの?」


笑われた。


「え、待って…。意味が分からないよ星野」

「お前が好きだ。 これで分かる?」


あたしはようやく分かった。分かった途端に嬉しくなって、とんでもなく嬉しくなって。
きっと人生の中で一番嬉しかったんだと思う。


「喜んで!」


笑顔でこたえた。



だけど、後から冷静になってみれば、大変なことだった。
トップアイドルの星野。ただの平凡な女の子。

バレたらひとたまりもない。

大気や夜天にも怒鳴られた。「どれだけ大変な事か分かってるんですか?」「何考えてんの?」と。




「傷付くのは2人なのに。」




その日を境にあたしたちはナイショで付き合うことになった。
(元々からそんなに公に付き合ってはいなかったけれど…)


何をするのにもナイショ。だれにも見つかっちゃダメ。



だからこうしてあたしたちは誰も居ない所を探しては、日ごろの欲求を満たす。
…何もいやらしいことばっかりじゃない。

マッサージをしてあげたりとかお話を聞いてもらったりとか。

そんな可愛らしいことをする時もあれば、
年頃の男女らしいこともする。

キスしたり、抱き合ったり、なんたり。


その度にあたしの胸は苦しくなる。


「はぁ…あっんん」


ほんの一瞬に近い幸せな時間なのに、幸せと苦しさが一緒になってやってくる。

「や、ん…」


いずれこの幸せが消えてしまうのかと
消えてしまう原因は自分たちで作ってしまうのかと

そう思った瞬間に涙が止まらなくなる。


星野はその度に涙を拭いて「だいじょうぶ」とささやいてくれる。


だからあたしも「だいじょうぶ」という。


たとえば、あたしと星野が知り合ってなかったら?
―この幸せを噛みしめることは出来なかった

たとえば、あたしと星野が幼馴染の関係を保っていたら?
―みんな幸せに暮らしていたのかもしれない



そろそろ終わりが来るのかもしれない
限界がやってきて 傷付いてズタボロになっちゃうかもしんない。


準備はいいよ。いつでも。


私はもうじゅうぶん。 幸せになれたよ。



「せーや…っはあ、」

「おだんご?」


「大好きだったよ、」




(若さ故の過ちに)




(きっと、もうすぐ楽になれるのかもしれない。きっと、いますぐにでも。)





あれ…これうさぎちゃん?大人っぽすぎない、かな…?汗