あまりにも突然でビックリであたしの顔はきっと情けなかった。

「・・・・・・・・・カメラどこ?!」

「ねーよ」










それは1週間前のこと。


今まで仲良くしてきたお隣さんが急に引越しをしていってしまった。
優しくしてくれたおばさんはもう居なくて家の前を通るたびに寂しく感じた。
今度引っ越してくる人とも仲良く出来たらいいなと思った。
・・・・・お菓子を色々とくれるおばさんがいいな。

「うさぎちゃん!!何考えてるのよ!」
「あはっ☆ごめんごめん!」



ある時、お母さんのおつかいを頼まれた。
とても1人では出来ないほどの量。

「いっつも部屋のばっかでゴロゴロしてたら太るからちょうどいいじゃない」

ぶつぶつ言いたかったけどお小遣い減らす、とまで言われたら敵わないから
ルナと一緒に行く事にした。



「あ〜あ!自分もくればいいのに〜何もあたし1人で行かせなくていいじゃんっ」

「うさぎちゃんのことを心配しておつかいに出したのよ?それに私もいるじゃない」

正直ルナが居ても荷物を運んでくれないじゃない、といおうとしたけどさすがにやめた。
1人で行くよりずっとルナが居てくれた方が楽しいし!
ぎっしりと書かれたメモ用紙を見ると今日はハンバーグだと分かった。





「玉ねぎも買った、お菓子も買ったー・・っと!」


パンパンな袋を四つ持てたのは良いけれど…重たい。
これが娘を心配した結果?!太るも何も筋肉がつきそうだった。
ルナがそばで頑張って、と応援してくれるからなんとか歩けてるけどさっきから全然進んで無い気がする。

「ル〜ナ〜〜!!休憩しよーよー!!!」

「そうね…じゃあそこの角を曲ったら確かベンチがあったはずよ」

「もう疲れたよぉ〜」

袋の持ち手が腕に食い込んでるのを噛み締めてよろよろと歩いていた。

そしてそれは起こった。









「あっうさぎちゃん!」

「っ?!」





―ドンッ!!











「いったー!!」





―べちゃん、








「っとごめんごめん!大丈夫か?」


すっと赤いスーツから伸ばされている手を掴んで立ち上がった。
思わず顔が近くなって慌てて離れたのと一緒に変な音がした。



「・・・・・・あぁぁ!!!!!」

「あっちゃー…ごめん、これはひでぇな」



もう真っ白。

下を見ればそこはぐっちゃぐちゃで卵やらみかんやらが割れていた。
とても拾ってセーフというレベルではなかった。
さすがのルナも顔が真っ青で(というか呆れてる感じ。)うさぎちゃん…と呟いた。
……どうしよう?!



「ルナどうしよう!あたしもうお金持ってないし…怒られちゃうよ!!」

「でもどうしようにもないじゃない。こればかりは正直に言った方が…」

「いーやー!!!!」


呆然とボロボロになった袋と睨めっこをするけど元に戻るはずなくて。
傍にいた男の子がなんて言ったか聞こえなかった。
「…え?今なんて?」





「これぐらいのお金なら払えるから今からスーパー行こうぜ!」




いつの間にかレジに並んでいた。









「ほんっとにほんと〜〜〜にっありがとうございます!!!」

「いやいやぼーっとしてた俺が悪かったしな」

「うさぎちゃん…本当に返せるの?」

「あぁお金なら返さなくて良いぜ また会った時に仲良くしてくれれば感無量ってやつ!」


結局お言葉に甘えて買ってもらった。
星野、っていう人は返さなくても良いっていうけど流石にそれは出来ないからなんとしてでも返す。
・・・・・だけど住所が分からない。


「そういやどこに住んでるの?」

「そのうち教えるよ」



ニカっとイタズラっぽく笑った星野に何故か顔を赤らめてしまった。


───よくみればカッコいい、かも。



「人の顔みて何ニヤニヤしてんだよおだんご」

「?!今おだんごって呼んだわね?!あたしの名前は月野うさぎよ!」


じゃあ月見だんごか?と茶化してくる星野に思わず足を踏んでやろうかと思った。

でも・・・

まだ少ししか会ってないし、おまけにイジワルなヤツだけど良い人みたい。




「じゃあそろそろ行かなくちゃ!絶対お金返すからね!!住所教えなさいよ!」

返さなくて良いって言ってんだろと言いながら手を振る星野に
手を振り返した。なんとなくもう会えない気がしたから。














だからこれはドッキリだと思った。
まさか隣の家に引っ越してきたのが星野だなんてドッキリ以外ないでしょ!!!!




「・・・・・」


「そんな嬉しそうな顔すんなって。これから毎日来てやるよ」

「してないしっこなくても良いから!」

「あ、ちなみに学校も十番高校だからな。仲良くしようぜ」

「〜〜〜!!!」


ほれ、これカステラ。
そう言って撫でられた頭が温かく感じたのはきっと気のせいだよね。





「これからよろしくな!」




(幼馴染から始まる恋の予感)